ギリシャ語でファジーは食べるでオートは自らだ。自食のことだ。自らの細胞の器官であるミトコンドリア・小胞体などを食して、分解し再利用する。細胞自らのDNAも破壊の対象になる。全身の細胞の中にはこのオートファージで支えられている細胞が存在する。特殊な時だけに出現するのではない。
メカニズムは細胞内に膜が出現して、細胞内にあるタンパク質などを包み込んで球状の構造〈オートファゴソーム〉を作る。このオートファゴソームに、細胞内のリサイクル工場であるリソソームという袋が接触・融合することで、中身のタンパク質などが分解される。リソソームには分解酵素が豊富にある。これにより、オートファゴソーム内に取り込まれた不要物質が除去される。タンパク質はアミノ酸まで一度分解され、体内で新しいタンパク質として再合成されたりする。
オートファジーは日常的に起こっている。人間は体内の細胞の中身を少しづつ入れ替えている。体重60キログラムの成人男性の場合、1日に約240グラムのたんぱく質が体内からオートファジーによって再合成される。
例えば、前駆細胞から分化した赤血球は細胞内のヘモグロビンで酸素を運搬することに特化した細胞のために、細胞分裂を起こす必要も、細胞内でタンパク質を合成する必要もなくなる。細胞内の細胞核・ミトコンドリア・小胞体などの細胞内の不要器官を自食することが知られている。
水晶体で細胞分裂で出来た繊維細胞が細胞内の細胞核や細胞内器官を自食することで透明細胞へと変質すると言われる。細胞核のDNAがオートファージされないで残ると白内障になると言われるに至っている。
人の脳内では、〈アミロイドβ〉というタンパク質が増えて塊を作り、神経細胞が死んでいく。が、健全な人では《塊を作るタンパク質に対して選択的にオートファジーが起こり、正常な状態に戻そうとする》ことが分かっている。アミロイドβなどを除去するのもオートファジーの役割の一つとされている。